かつて5万円台のミドルクラス有線イヤホン界において、その圧倒的なコストパフォーマンスと完成度で「一強」とまで囁かれた名機、AFUL Performer 8。その衝撃から月日が流れ、ついに待望の、本当に待望の後継機が登場しました。
その名も、「AFUL Performer 8S」。
前作の「8」は、1DD+7BAという多ドライバー構成を破綻なくまとめ上げ、緻密で濃密なサウンドでファンを魅了しました。しかし、今回の「8S」は単なるマイナーチェンジではありません。ドライバー構成の見直し、マイクロプラナードライバーの導入、そして革新的なベントシステムの搭載と、まさに「S」の名にふさわしい進化を遂げています。
今回は、このAFUL Performer 8Sを徹底的に使い込み、前作との違いや、どのような音楽体験を提供してくれるのかを、余すことなくレビューしていきます。
1. 外観・デザイン:宇宙の神秘を耳元に
まず目を引くのが、その圧倒的な美しさを放つフェイスプレートです。

今回のデザインコンセプトは、「NASAの木星探査機ジュニアが捉えた、木星の壮大なイメージ」。
照明樹脂の中に、天然の阿漕貝(あこやがい)の破片を散りばめ、真珠パウダーを用いて手書きで木星の雲を再現するという、工芸品レベルのこだわりが詰め込まれています。
動画内でも語られている通り、このデザインはもはやイヤホンの枠を超えたアート。光の当たり方によって表情を変えるその姿は、所有欲をこれ以上ないほどに満たしてくれます。
筐体自体は、膨大な耳型のデータに基づいた人間工学設計となっており、まるでカスタムIEM(プロ向けのオーダーメイドイヤホン)のような抜群のフィット感を実現しています。
2. 驚異の8ドライバー+1パッシブラジエーター構成
Performer 8Sの真髄は、その内部構造にあります。前作との比較も交えながら、スペックを確認してみましょう。
| 項目 | AFUL Performer 8S (新作) | AFUL Performer 8 (前作) |
| ドライバー構成 | 1DD+6BA+1マイクロプラナー | 1DD+7BA |
| 追加機構 | 1パッシブラジエーター | なし |
| インピーダンス | 26Ω ±20% | 30Ω ±20% |
| 感度 | 108dB | 110dB |
| ケーブル | 6芯 高純度単結晶銅銀メッキ | 4芯 ケーブル |
| 特筆すべきは、BA(バランスド・アーマチュア)を1基減らし、新たに**「マイクロプラナードライバー」**を搭載した点です。 | ||
| 平面駆動(プラナー)の繊細さと伸びやかさを高域に持たせることで、BAだけでは表現しきれなかった「空気感」の再現に成功しています。 |
さらに、低域の質感を高めるための**「パッシブラジエーター」**も追加。これにより、物理的なドライバーの振動だけでなく、空間的な深みのある低音を生み出しています。
3. 音質レビュー:至福のリスニング体験
実際に50時間以上のエージングを経て聴き込んだ、その音質について詳細に解説します。
高域:マイクロプラナーがもたらす「余裕」と「伸び」 最も進化したと感じるのが高域の質感です。マイクロプラナードライバーの恩恵により、シンバルの消え際や弦楽器の倍音成分が、非常に滑らかに、そしてどこまでも伸びていくような感覚を覚えます。
前作で稀に感じられた「詰まり感」が一切なくなり、超高域までストレスなく突き抜けるサウンドは圧巻です。それでいて、刺さりや不快なピークは完璧に抑えられており、長時間のリスニングでも聴き疲れしません。
中域:肉厚で実在感のあるボーカル ボーカル帯域は非常に濃厚。一歩前に出てくるような実在感があり、歌手の吐息や唇の動きまで見えるような解像度の高さを持っています。
特にハイトーンの女性ボーカルとの相性は抜群で、Performer 7で評価された「中高域の輝き」と、Performer 8の「中低域の厚み」を高い次元で融合させたような、非常に美味しい鳴り方をします。
低域:立体的な迫力と深い沈み込み 新たに追加されたパッシブラジエーターが効いているのか、低音の「広がり」と「深さ」が格段に増しています。
タイトに締まったパンチのある低音というよりは、コンサートホールの空気そのものが震えるような、壮大でスケール感のある響きです。ベースラインの輪郭は保ちつつも、その奥にある深い振動までしっかりと描写してくれます。
4. 革新的な「ベント調整システム」によるチューニング変更
Performer 8Sのユニークな機能として、ロゴ付近にあるベント(空気孔)を塞ぐか開けるかによって、低域のチューニングを変更できる仕組みがあります。

- ベントを閉じた状態(標準):Performer 8を正統進化させた、情報量たっぷりの濃密サウンド。あらゆるジャンルを高いクオリティで鳴らす万能スタイルです。
- ベントを開けた状態:低域がより柔らかく、空間的に大きく広がるようになります。オーケストラや映画のサウンドトラックなど、壮大なスケール感を重視したい楽曲に最適です。
※動画でも指摘されていますが、調整が「粘着シール」によるものなので、頻繁に切り替えるというよりは、「自分の好みのスタイルに固定する」ための機能と捉えるのが良いでしょう。
5. 前作「Performer 8」との比較:どっちを買うべき?
ここが最も悩ましいポイントかもしれません。結論から言うと、**「完全な上位互換というよりは、キャラクターの差」**が存在します。
- Performer 8S がおすすめな人
- ジャズ、クラシック、サウンドトラックを壮大なスケールで聴きたい。
- マイクロプラナーによる、繊細で伸びやかな高域を重視する。
- 全体的にウォームで上品、かつ情報量の多い「大人のサウンド」を求める。
- **「究極の万能機」**が欲しい。
- Performer 8(無印) がおすすめな人
- ロックやポップス、アニソンなどを、キレのあるタイトなサウンドで楽しみたい。
- ハキハキとしたエネルギッシュな鳴り方を好む。
- 少しでも価格を抑えつつ、ミドルクラスの最高峰を体験したい。Performer 8Sは、よりオーディオマニア向けの、洗練された「フラッグシップ機(同社のDONG Xに近い傾向)」のような風格を纏っています。
6. 付属品・装着感:隙のないパッケージング
AFULの製品は、付属品の充実度でも定評があります。
- 3種類のイヤーピース(それぞれ素材感や硬度が異なり、音質調整が可能)
- シックで高級感のあるハードケース
- 取り回しの良い、高品質な6芯銀メッキ銅ケーブル装着感についても、耳に吸い付くようなフィット感で遮音性も極めて高く、音楽の世界にどっぷりと浸ることができます。この装着感の良さは、数あるイヤホンブランドの中でもAFULはトップクラスと言えるでしょう。
7. メリット・デメリットまとめ
メリット
- 圧倒的な解像度と伸びやかな高域:マイクロプラナーの恩恵。
- スケールの大きな低域:パッシブラジエーターによる深い響き。
- 極上の装着感:長時間使用しても痛くなりにくい。
- 所有欲を満たすデザイン:木星をイメージした唯一無二の美しさ。
- 高い汎用性:ベント調整により、楽曲に合わせた微調整が可能。
デメリット
- プラグ交換非対応:4.4mmバランス接続固定のため、3.5mm環境の方は変換アダプタやリケーブルが必要。
- ベントの調整方法:シールでの開閉という仕組みがややアナログ。
8. 総評:5万円台の基準を再び塗り替える名作
AFUL Performer 8Sは、単なる人気モデルの再生産ではありません。
ミドルクラスという価格帯に、マイクロプラナードライバーとパッシブラジエーターを組み込み、それを見事に調律しきったAFULの技術力の結晶です。
前作「8」が持っていたパワーに、繊細さと壮大な空間表現が加わったそのサウンドは、まさに「木星」の名に恥じない重厚さと輝きを兼ね備えています。
今、5万円〜6万円付近で「一生モノのイヤホン」を探しているなら、このPerformer 8Sは間違いなく最有力候補になるはずです。耳に装着した瞬間、あなたの音楽ライブラリが新しい光を放ち始めることをお約束します。
画像の引用元:https://hifigo.com/products/aful-performer-8s?srsltid=AfmBOooMHD_RLUdadfahpOVYHzgiZOhpopbQd8DQhyZA5INgc-025FJ_
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