オーディオファンならずとも、その名を聞けば背筋が伸びる英国の老舗オーディオブランド「Bowers & Wilkins(バウアーズ&ウィルキンズ / B&W)」。アビー・ロード・スタジオをはじめ、世界中のレコーディング現場でリファレンスとして愛用される彼らが、満を持して世に送り出した最新フラッグシップモデル。
それが、「Bowers & Wilkins Px8 S2」です。
「ワイヤレスヘッドホンで、これ以上の音は存在するのか?」
そんな問いに対するB&Wの回答は、あまりにも明確で、そして衝撃的でした。
前作「Px8」ですら完成形と言われていた中で、一体何が変わり、どのような進化を遂げたのか。129,800円という価格に見合う価値はあるのか。その真実に迫ります。
1. 進化の核心:ハイレゾの真価を引き出す「心臓部」の革新
B&Wが「最高のもの」として開発したPx8 S2。その最大のトピックは、音質の根幹を成すドライバーユニットと、デジタル伝送技術の劇的な進化にあります。
① 40mm カーボンコーン・ドライブユニットの搭載

Px8 S2には、B&Wのハイエンドスピーカー「700シリーズ」などの技術を応用した40mmカーボンコーン・ドライブユニットが搭載されています。 従来の樹脂製コーンとは一線を画すこの素材は、以下の点で圧倒的な優位性を誇ります。
- 驚異的な剛性と軽さ: カーボン素材特有の「硬くて軽い」性質が、信号に対するレスポンスを極限まで高速化。
- 歪み(ひずみ)の徹底排除: 音量を上げても、複雑な楽曲でも、音が崩れることなく正確に振動板が動くため、全帯域にわたりピュアなサウンドを実現します。
さらに、このドライバーは耳に対して最適な角度で配置(アングルド・ドライブ)されており、ヘッドホンでありながらスピーカーで聴いているかのような自然な音場を創出します。
② aptX Lossless 対応で「完全ワイヤレス・ハイレゾ」へ
ここが今回の最大の進化点と言っても過言ではありません。Px8 S2は、Qualcommの最新コーデック「aptX Lossless」に正式対応しました。
これまでのBluetooth伝送では、どうしてもデータが圧縮され、微細な音が失われていました。しかし、aptX Losslessにより、CD品質(44.1kHz/16bit)をロスレスで伝送可能に。さらに、最大96kHz/24bitのハイレゾ再生をもワイヤレスで実現します。 「良いドライバー」に「最高品質のデータ」を届ける道が開通したことで、ワイヤレスリスニングは新たな次元へと突入しました。
③ マイク性能と軽量化の恩恵
見逃せないのが、実用面のアップデートです。
- マイクの増設: 前作の6個から合計8個へとマイクが増加。通話品質とノイズキャンセリング精度が物理的に向上しています。
- 軽量化: これだけの機能を詰め込みながら、重量は約310g。前作Px8よりも約10gの軽量化に成功しました。長時間のリスニングにおいて、この「10g」の差は想像以上に大きな快適性の差となって現れます。
2. デザインと装着感:所有する喜びを満たす「ラグジュアリー」な質感

箱を開けた瞬間、息を呑むような美しさがそこにあります。Px8 S2は単なる家電ではなく、高級時計やスーパーカーの内装を彷彿とさせる「ラグジュアリーアイテム」としての風格を漂わせています。
妥協なき素材選び:ナッパレザーの誘惑
イヤーパッドおよびヘッドバンドのアーム部分には、高級車のシートなどにも使われる**ナッパレザー(本革)**が贅沢に使用されています。 合成皮革では絶対に再現できない、しっとりと吸い付くような肌触り。耳周りを優しく、かつ隙間なく包み込む感触は、装着した瞬間に「良いものを使っている」という満足感を脳に直接届けてくれます。
アイコニックなアルミダイキャスト・アーム
B&Wのヘッドホンを象徴する、曲線を描くアルミニウム製のアーム。あえてケーブルを内部に隠さず、アームの中央にスリットを入れてケーブルを見せるデザインは、メカニカルでありながらエレガントです。 金属の冷んやりとした質感と、レザーの温かみのコントラスト。どこから見ても隙のない造形美は、デスクに置いているだけでインテリアとしての価値すら感じさせます。
極上のフィット感

側圧(締め付け)は強すぎず弱すぎず、絶妙なチューニングです。 ナッパレザーの柔軟性と、約310gに軽量化されたボディバランスが相まって、長時間の映画鑑賞や作業中のリスニングでも疲れを感じさせません。メガネを掛けているユーザーにとっても、この柔らかいイヤーパッドは大きな救いとなるでしょう。
3. 音質レビュー:ワイヤレスの常識を破壊する「圧倒的進化」

さて、最も重要な「音」についてです。 結論から申し上げますと、Px8 S2のサウンドは**「現行ワイヤレスヘッドホンの中で、頭一つ抜けた存在」**です。前作Px8や下位モデルPx7 S2と比較しても、その進化の幅は歴然としています。
高音域:突き抜ける透明感
「ワイヤレス特有のデジタル臭さ」や「高音の刺さり」は、このヘッドホンには皆無です。 カーボンコーンの恩恵により、高音域はどこまでも澄み渡り、クリスタルのような透明感を持っています。シンバルの余韻、ヴァイオリンの倍音成分、息遣いといった微細なニュアンスが、空気に溶け込むように消えていく様は圧巻。 これまでのワイヤレスでは聞こえなかった「静寂の中の音」が聞こえてくる感覚は、まさに鳥肌ものです。
低音域:深淵なる沈み込みとスピード感
低音は単に「量が多い」だけではありません。極めて質が高いのです。 ロックのバスドラムやEDMのベースラインにおいて、ズシンと深く沈み込む重厚さを持ちながら、決して膨らみすぎて他の音を邪魔することがありません。 「ボワつく」のではなく、「締まっている」。 解像度が非常に高く、ベースの弦が震える様子が見えるようなリアリティがあります。前作Px8と比較しても、こもり感が一切なくなり、よりクリアで見通しの良い低音に仕上がっています。
中音域:艶めかしく、生々しいボーカル
ボーカル好きにはたまらないのがこの中音域です。 声の質感は、前作よりもさらに「艶(つや)」と「色気」を増しています。ボーカリストが目の前で歌っているかのような生々しさがあり、スーッと伸びていく高揚感が非常に心地よい。 Px8を聴き直すと「少し膜が張っていたのか?」と錯覚してしまうほど、Px8 S2の抜けの良さとクリアさは際立っています。
音場と解像感:もはや有線レベル
特筆すべきは音の「粒立ち」と「定位感」です。 どの楽器がどこで鳴っているのか、手に取るように分かる解像感は、ワイヤレスヘッドホンの限界を突破しています。音場も適度に広く、閉塞感は皆無。 オーケストラのような大編成の曲でも音が団子にならず、それぞれの楽器が独立して主張しつつ調和する。ハイレゾ音源のポテンシャルを余すところなく引き出す実力を持っています。
4. 機能性:音楽に没入するための「賢い」サポート
音質以外の機能面においても、Px8 S2は現代のフラッグシップに相応しい性能を備えています。

自然さを極めたノイズキャンセリング
B&Wのノイズキャンセリング(ANC)に対する哲学は、「音楽を色付けしないこと」です。 そのため、他社製品にあるような「鼓膜が圧迫されるような強力すぎるANC」ではありません。評価としては10段階中「8」程度ですが、これは欠点ではありません。 エアコンの音や街の雑踏といった不快なノイズを極めて自然に消し去り、音楽だけを浮かび上がらせてくれます。ANC特有の違和感が苦手な方こそ、この自然な静寂を体験すべきです。
会話もスムーズな外音取り込み
外音取り込み(パススルー)機能は、前作から大きく進化しました(評価:9/10)。 マイク性能の向上により、ヘッドホンをしていないかのような自然な聞こえ方を実現。コンビニのレジや、デスクワークで急に話しかけられた時でも、ヘッドホンを外すことなくスムーズに会話が可能です。自分の声がこもって聞こえる不快感も大幅に軽減されています。
通話品質の実力
静かな室内であれば、ビジネス通話にも十分使える非常にクリアな音質です。ノイズ除去性能も高く、カフェなどのざわついた環境でもこちらの声を相手にしっかり届けてくれます。 唯一の弱点として、強風時の「風切り音」は多少入る可能性がありますが、日常使いにおいてストレスを感じる場面は少ないでしょう。
5. 総評:129,800円は「高い」か、「安い」か?

決して安い買い物ではありません。一般的なワイヤレスヘッドホンの数倍の価格です。 しかし、結論として、このヘッドホンには**「価格以上の価値と感動」**が確実に存在します。
もしあなたが、
- 「ワイヤレスでも音質には一切妥協したくない」
- 「所有するだけで心が満たされる美しいプロダクトが欲しい」
- 「毎日の通勤やリラックスタイムを、極上のオーディオ体験に変えたい」
安価な製品を何度も買い替えるよりも、本物を一つ手に入れ、長く愛用する。 ナッパレザーが馴染み、自分の音になっていく過程を楽しむ。そんな豊かな音楽ライフが、このヘッドホンと共に始まります。
「あまりの音質に鳥肌が止まらない」という体験。次はあなたが体感する番です。
※画像の引用元:https://www.bowerswilkins.com/ja-jp/product/over-ear-headphones/px8-s2/FP45365P.html
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